産業医制度の現状と課題

皆さんは産業医という業務形態について、どのようにお考えでしょうか。
恐らくイメージとしては、一般的な勤務医と比較するとそう難しくはないというような感覚を持たれている方も少なくないと思います。

しかし、昨今では医療業界全体を含む、社会情勢なども変化していることもあり、できるだけイメージ等ではなく、現状はどのようになっているのかを、実態ベースで可能な限り掴んでおく方が、転職前後で齟齬が発生するようなこともなく、安心してお勤めいただけるのではないでしょうか。

そこで、今回は産業医制度に関する現状と課題について、まずは皆さんにお話しをしたいと思います。

産業医は全体として求人のニーズが高いのが現状


産業医自体は、全体的に求人のニーズそのものが高いという現状があります。
その理由としては、絶対的なニーズ量に対して産業医の大学を出て経験を積んだ医師の数が不足しているからです。

業界動向に関するデータを確認してみると事情がみえてくるのですが、まず産業医としての資格を持っている医師はおよそ7万人以上とされています。
それに対して、産業医の選任が必要とされる事業所はなんと16万件にも上ります。
もちろん、1人の医師が1つの事業所を専門とするケースは少ないので、単純な計算にはなりませんが、それでも有資格者に対して必要数が圧倒的に多いという事実はあるのです。
また、産業医の選任を必要とする企業の数が突然減少するようなことはほとんどないものと考えられますので、今後も継続的に同じ状況が続いていくものとみられます。

そもそも、産業医の選任に関しては、労働安全衛生規則にて定められているものです。
事業所の労働者が50人未満であれば選任する義務は発生しませんが、労働者数が増加するにつれて最低必要人数などの条件は変化していきます。

3001人以上ともなれば、嘱託ではなく専属で2人を雇い入れる必要が出てくるのです。
専属医となれば、企業の社員として勤務することができますので、産業医への転職を考えている方の多くは、嘱託医ではなく専属医を目指しているのではないでしょうか。



産業医は普通の医師よりも幅広い業務を行う


産業医の業務内容は、通常の勤務医とはその勝手が少し違っています。
そのため、勤務医のような感覚で勤務を行うことを考えていると、少々実態とずれてしまうような部分も出てくるかもしれません。
そこで、まずは産業医が実際にはどのような業務をおこなっているのか、その内容について少し触れてみたいと思います。

産業医の行う業務内容は、ハッキリ言えば企業の規模、あるいは業態等によって大きく異なってきます。
例えば、企業内における健康診断の実施、あるいは定期的な社員の健康相談・ストレスチェック、衛生委員会への参加などが主な業務内容とはなりますが、最低でも月に1度はその現場を巡回し、状況に何らかの問題があると判断される場合には、必要な措置を考え、対処する必要もあります。
また、分かりやすい例で言えば、例えば工場、社屋といった現場の違いにおいても業務内容には変化がみられます。
例えば工場などの場合には、主なターゲットは安全対策となるでしょうが、社屋でのデスクワーク中心の事業場の場合には、生活習慣病やメンタルヘルスケアなどが主のターゲットとなるのです。
その他、時間外労働などによって疲弊を感じる従業員の面接やケアも大切な仕事となります。
休職、復職に関する判断などは産業医に委ねられているためです。
ここまでご覧いただければお分かりと思いますが、実に多様な状況に対応するための、幅広い能力が求められるという現状があるのです。


産業医の8割はメンタル不調!?メンタルケアが今後の課題


実は、ある調査によると産業医の内8割はメンタルの不調、過労に関する対策などに関して、役割を全うする自信がないと答えています。
その理由として、1つは多くの職場において心理面の不調などを訴える方の増加が著しいことが挙げられます。
現場で勤める産業医からは、専門外であるために適切な対応を行うことが非常に難しいという声もあがっており、メンタルケアという業務内容は、産業医制度に対する大きな課題と言えるでしょう。